家相の設計について

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コラム 06   家相の設計について

 私ごとですが、今のように家相を設計に取り込んでいなかった時期、何を念頭において設計していたか思い返してみました。
 まず、設計を進める場合、施主とのヒアリングにより、現在お住まいの間取り、全体および各部屋の面積、水回りの面積、収納容量を確認させてもらいます。できるだけ、現在のお住まいを拝見させていただきます。
 次に、全体予算を確認します。コストコントロールは重要な基本事項です。全体予算から工事予算を把握します。予算より工事可能な延べ面積の最大限の目安を付けます。

 全体予算の中には、建物解体費、往復の引っ越し、仮住まいの敷金・礼金・家賃、本工事費、外構工事費、設計監理料、敷地測量、地盤調査、水道加入金、建物登記費、建物取得税、家具、カーテン・ブラインド、地鎮祭・上棟祭・竣工祭等、たくさんのお金がかかります。今一度これ等の全体予算の概算表をつくり、施主と共に本工事費にかけられる金額を確認します。この点について、しっかり押さえてないと、せっかく設計をまとめても、後で実行予算とあまりにもかけ離れて、右往左往している話をよく聞きます。
 予算をあげる計画変更は可能ですが、一度夢を見たプランから面積を絞り、仕様もさげて、全体予算を下げる作業は、心情的にも無理が出ます。たいていは、初めからやり直しになると思います。計画の内容以前に、やってきたことが無駄になってしまいます。

 全体予算を把握できれば、60万/坪とか100万/坪とか、施主の望んでいる仕様単価で、建物規模が把握できます。計画プランは、全体的にも、部分的にも、現在のお住まい以上に、間取りに余裕を持たすことは最低条件です。
 それから、基本設計に入ります。計画建物で一番条件の良い位置にLDKを配置、LDKと道路よりのアプローチの良い接点に玄関、等々各部屋を配置します。ここまでは今も同じです。

 この時、以前は、主婦の家事における動線、他の家族の動線をなるべく短く、交差しないようになどと同時に考えながら計画したと思います。建物の内外を図面上で歩きながら、外観・内部空間の広がり、見え方、感じ方を中心に設計を進めてきました。

image006_2_2.jpg家相を取り入れた場合、どう違うかといいますと、上記に加え、更に家族の生まれ年、表裏鬼門・北・乾等の方位を中心に、火器や水回り・玄関等が障害に ならないように同時に考えて計画します。家相か、環境による配置か、動線か、どれが優先かではなく、どれも優先して、その時、その状況によって全体的なバランスを見て判断して設計を進めていきます。

 様々の要素をいっぺんに抱えていますから、かなり集中して計画します。非常に、まとめるのは大変ですが、設計の条件が厳しいので、決まれば大きな変更もなくなります。 家相を考えた場合、家相を考えないで計画するよりも解答案も極めて少ないと思います。理論的にある程度考えると、後は感に従って進めます。家相を考えない場合も同じですが、頭の中に入れなければならない容量が大きく、密度が濃くなると思います。
 たとえがあまり適切でないと思いますが、麻雀の役縛りに似ていると思います。私の今の感覚では、二役縛りどころではなく、満貫縛りといったところでしょうか。相当の感と、決め打ちが必要です。時間内にてんぱることも絶対条件です。手や待ちが良くても上がれるとは限りません。反対のことも言えます。しかし、それなりに家相を考えていないプランに劣らぬ形に収めることも必要条件です。

 基本的には、家相を考えた計画が、家相を入れない場合の案と比べ、空間として劣ることはないと思っています。劣っていると感じた場合は、詰めが甘いか、もともと、基の条件に無理があるからだと思います。家相を考えない案も、満足には至らないと思います。つまり、家相の問題ではないと思います。
家相を考えた場合、工夫に磨きがかかり、かえってすっきりした、個性的なプランになることもよくあります。このあたりも麻雀に似ています。運気.jpg
 施主との打ち合わせ中にこんな会話がありました。
“お子様の生まれ年の方位に、火器があると精神的に良くない”旨を伝えると、母親は“確かに彼は、精神的に心配なところがあるので、必ず避けてください”。又、水回りがどちらにふっても、ご主人か他の家族に方位がかかった場合で、どちらも致命的な配置ではない場合、“やはりご主人に何かあると、家族全員が困るのでご主人優先にしましょう“ 等の会話がありました。

 初めのころは、家族一人一人の健康まで具体的に踏み込んだ住宅の打ち合わせを、経験したことがなかったので、不思議な感じがしました。他のどんな手法でも、住宅のプランを決めるうえでこのようなアプローチの仕方はできないと思います。設計に対する考え方の間口が広がることは確かです。設計条件が厳しくなるのも確かです。
 設計において平面のみの2次元的な考え方でなく、立体的な3次元、また時間差を考慮して家族が交流する空気の流れをイメージし、膨らませていくことは当たり前の手法です。その上に、具体的に家族の健康や運勢を、大胆にもプラン上で配慮したりすることは、家族ならではの、家族同士でしか思い当たらない領域に入り込んでゆきます。この、不思議な軸をどう設計に生かしていくかは、別の創造力を必要とします。
 賛否はあると思いますが、家族同士の中では、家相という違った目線から、互いを思いやる配慮が働いていることは確かです。
 戸建住宅を計画する目的の一つは、これからの家族の在り方を考え示していくことでもあると思います。 

 このように設計者だけでなく、主役である家族みんなが、お互いに家族同士のことを考えて、今までを感謝・反省し、前向きに設計を進めていくことが、千勝神社の家相の原点ではないかと感じております。
 これをきっかけにして、こども、主婦、主人、老人それぞれの立場に立って、いろんな角度から、考えていくべきなのでしょう。
 最終的には、形に現わせない想いや、願いを再確認して共有することも、家族の満足につながるように思います。たとえ、最終的には人から見て平凡な建物になろうとも、家族の互いの理解・思いやりという精神的なつながりを確認していくことは、新築する前と後ではかなりの差があると思います。 その後生活していくためにも、この道程は有意義な時間だと思います。
 そこには、家族を思いやる、もう一つの“ゆとり”が感じられるのではないでしょうか?




田部 博一(たべ ひろかず)/ 一級建築士設計事務所 田部建築研究室

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