設計の打合せについて

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コラム 03   設計の打合せについて

住宅を建てるとき、人により色んなきっかけがあると思います。

 建替にしろ、新築にしろ、現在住んでいる家が狭い、結婚、子供の成長、親との同居等、色々あると思います。大きなお金もかかりますし、精神的にも、時間的にもかなりの負担がかかります。その中で進めて行く家族の一大事業です。
家族やご夫婦の、人生の中でも、体力的、金銭的にも、かなり良い充実した時期であると思います。
 今までお会いした方々も、当然のことですが、年齢差はありますが、気持に余裕があり、夢を持って、前向きな方がばかりでした。面白いもので、その中でも、行け行けの人、慎重な人など個人差があります。いずれにせよ、せっかく家を建てる機会なので、今までの半生を反省し、家族と共に、希望を持って将来を考える良い機会だと思います。

 まず始めに、これからどのような環境、雰囲気の家に住むのか検討していかなければなりません。そのためには、今まで自分たちが過ごしてきた環境や、趣向など、振り返り良かったこと、悪かったことを一度見直してみないと、これから創る家のイメージがつかめません。なかなか、一人では創造することは難しいと思います。
 その相談の相手が、設計者だと思います。かなり、プライベートに踏み込んでいきますので、信頼がおけ、年齢や、感性が近い設計者が理想に思います。普段の生活、家族構成、家族の生活パターン、好み、趣味、将来の夢など様々のことを総合して、形にしていかななければなりません。
 住宅はテレビやパソコン等のお店で売っている商品とは少し違うと思います。
金額もはりますし、具合が悪くなったからといって、すぐ買い替えることもできません。器の中で暮らしますから、建物への愛着、家族の思い出や深さも違います。色々な思いが込められます。
 打ち合わせは、営業や設計者にとって、自分のイメージや、自社の商品ばかりを押し付け、施主を説得するものではありません。
 施主の話をよく聞いて、家族の理想の空間をもとめて打ち合わせが行われるべきだと思います。

 それには、施主も、設計者もお互いに信頼しあう、腹を割った関係が必要です。打ち合わせをして、基本計画がまとまった状況では、施主・設計者共に、共有の価値観を持ち始めています。施主との大枠の仕事において、かなり見通しがついてきた状況ように感じます。勿論、そのあとにも、現場の職人さんに伝える図面や、見積調整など山場はたくさん残っています。
 お付き合いする、設計事務所・ハウスメーカー・工務店により、この設計打ち合わせの密度は違うと思います。
自分たちが満足出来るように、予算に合わせて、形になる前から、考え方についてまとめておくべきだと思います。
 此の形になる前の考え方がまとまれば、後は予算との兼ね合いで、プロの設計者なら、プランをまとめるのはそれほど難しいことではないと思います。

 すぐにプランをまとめることより、施主が自分でも気がつかない真の声を聞きだすことのほうが重要です。営業や設計者には、ある程度の経験や感性も必要とだと思います。そして、それらを検討して、良いものはのばし、修正すべきことは修正してバランスのよい間取りをまとめ、実施設計図を作成します。
 実施設計では、間取りだけでなく、立面図・パース・模型などを使って最終的な外観の見え方、断面図・矩形図・展開図により内部空間の見え方、使い勝手、電気・設備図により、水栓・給湯・排水・換気・電気照明、スイッチ、コンセントの位置など、打ち合わせをしながら決めていきます。

AZ05.JPG 次に、施主の想いやメッセージを伝える協力者を、設計者と共に探します。現場で実際に立てていただける工務店です。工務店・現場監督・大工さん・職人さんたちと、何やら、桃太郎の鬼退治のようですが、仲間を捜していくのです。
 施主のメッセージが、強く深いほど、また明確なほど他の人も、共鳴しやすいと思います。そのプロセスの結果、最後に一戸の家が完成します。

 自分と価値観や感性のあった設計者に出会えば、必ずその周りには、共鳴してくれる工務店・監督・大工さんたちがたくさんいるはずです。
既にハウスメーカーや、工務店を選ばれている方は、順番の違いはあると思いますが、今までのご自分の経験や感性を信じて、実際に建っている建物を見せてもらいながら、確認していけば同じです。
 雑誌に載っているからとか、人が良いと言うからではなく、自分の目で見て、肌で感じて確認することが大切であると思います。
 知人の家をみて気に入ったとか、近所を散歩していつも気になっていた家の人に、様子を聞いて設計者を捜された方もおられます。人柄とか、仕事の内容、全体の工程、設計料、その内容、工事費など色々すでにご存じの上での紹介もよくあります。

AZ12.JPG 設計者だけでなく、現場の方々とのコミュニケーションの取り方ですが、ことばによる会話が基本ですが、写真、スケッチ、実際の建物など、色々な方法があると思います。器用なお施主さんの中には、フリーハンドでプランを描いてこられる方もいます。これは、非常にありがたいのです。完成してなくても途中で止めたスケッチでもよいのです。家相など考えていなくてもよいのです。LDKと水回りだけの関係でも良いのです。このスケッチプランをみると、ことば以上に色んなことが一辺に解ってきます。

 動線・空間のイメージ・方角等のこだわり、こだわっていないところ、こだわっていて諦められないがプランがまとまらない、図面の読み方の理解度など一見すると、不思議なことにすぐわかります。勿論何よりも、一番熱意が伝わります。後は、言葉を添えて質問してお互いに確認しあえば、コミュニケーションの深さは相当なものです。すぐに、的を外れぬプランを提案できますから施主との、距離もかなり近づきます。むしろ、親近感さえ覚えます。
 例えば、言葉では対面キッチンにはこだわっていないと云っても、厳しい設計条件の中で、対面キッチンのプランを描いていることは、こだわっていることに、すぐ察しがつきます。言葉通り受け取って、対面キッチンでない案を提案しても、ほとんどの場合また対面キッチンが復活してきます。言葉ではではこだわっていないと思っているだけで、画にすると譲れなくなるのです。本人も気が付いていないのだと思います。
 又、手を動かしてプランを考えていると、この面積には、これだけのボリュームは入らないなどということも自然に体にしみてわかってきます。予定面積内に納めるとしても、相当困難であることは理解できます。ただ、要望を聞いて、プランを練りましたが、面積が足りないからできませんと説明しても、納得度は全く違います。
 このように、施主のスケッチプランは、下手でも、理解度が低くても、それなりに手を動かすことは、決して無駄ではなく非常に効果的であることを理解していただきたいと思います。
施主にとっても、自分の住宅の理解度が各段にアップする方法だと思います。

写真や画も同じです。雑誌の気に入った写真を見せてもらうと、説明されるよりずっとイメージが伝わってきます。その上でコメントをいただければ、理解度も相当深まります。
 以前、内装屋さんで、ほとんど図面なしで施工されている現場に合いました。
初め覗いた時は、設計を兼ねた現場監督が、頼りないスケッチプランで現場の職人さんたちを指示していました。
しかし、大した図面はないのですが、彼は写真をたくさん持っていました。見ていると、その場面ごとに、写真で大工さんと打ち合わせしていました。確かに、図面よりは写真のほうが、イメージしやすいので大工さんに対して、彼の持つイメージが伝えやすいのかもしれません。結構、それなりの、素敵なお店を作り上げてしまいました。
コミュニケーションの方法も、ひとつではありません。色んな方法があるとおもいます。

 住宅は一人では創れません。たくさんの協力者が必要です。
お金があるだけでも、絶対につくれません。
 表面だけのお付き合いでは、それなりの家しかできないと思います。
 まず、人間の大きな想いが必要です。大きな想いを実現するためには、偏った  思いであっては全体が成り立ちませんし、良いものはできません。

 昔からこれは変わらない法則のようです。
“家族一人一人の想い”から“ひとつの住宅”を生み出す時、大変多くの人のエネルギーが必要です。
 人と人との協力が不可欠です。
大棟梁の言葉通り“木組は人組”だと思います。


田部 博一(たべ ひろかず)/田部建築研究室




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